ある日突然、声が出なくなった――。喉に痛みはないのに、ささやき声しか出せない。そんな症状に心当たりがある方は「心因性発声障害」かもしれません。ストレスと声の意外な関係について解説します。
心因性発声障害とは
心因性発声障害は、声帯や喉頭に器質的な異常(炎症やポリープなど)がないにもかかわらず、声が出なくなったり、かすれたりする病気です。精神的なストレスや心理的な要因が声帯の動きに影響を与えることで発症します。
20〜40代の女性に多く見られますが、男性や子どもにも起こりえます。珍しい病気ではなく、耳鼻咽喉科の外来で比較的よく見かける疾患のひとつです。
主な症状
- 突然声が出なくなる(ささやき声になる)
- 声が極端にかすれる
- 話そうとすると声が詰まる
- 咳や笑い声は普通に出る
- 喉の痛みや違和感は少ない
特徴的なのは、咳や笑い声など無意識の発声は正常にできるという点です。これは声帯自体には問題がなく、意識的に声を出そうとする際に心理的なブロックがかかっている状態だからです。
原因となるストレス
心因性発声障害のきっかけとなるストレスはさまざまです。職場の人間関係、家庭内の問題、大切な人との別離、過度な仕事の負担などが引き金になることがあります。風邪による声のかすれがきっかけとなり、治った後も心理的に声が出せない状態が続くケースもあります。
本人がストレスの原因を自覚していないこともあり、「なぜ声が出ないのかわからない」と戸惑う方も少なくありません。
診断と治療
診断では、まず喉頭内視鏡で声帯に器質的な異常がないことを確認します。声帯に病変がなく、咳払いでは声が出ることが確認できれば、心因性発声障害が疑われます。
治療は音声治療(ボイスセラピー)が中心です。言語聴覚士と一緒に、リラックスした状態での発声練習から始め、徐々に通常の声を取り戻していきます。多くの場合、数回の治療セッションで改善が見られます。
ストレスの原因が深刻な場合は、心療内科やカウンセリングとの連携も行われます。無理に声を出そうと頑張りすぎず、専門家の力を借りることが回復への近道です。
周囲の方へのお願い
心因性発声障害は「気のせい」や「甘え」ではありません。本人は声を出したいのに出せない苦しさを感じています。温かく見守り、無理に話させようとしないことが大切です。
📌 この記事のポイント
- ✓声帯に異常がないのに声が出なくなる心因性の病気
- ✓咳や笑い声は出るのに話し声が出ないのが特徴
- ✓音声治療(ボイスセラピー)で多くの場合改善する
- ✓「気のせい」ではなく、専門的な治療が必要な病気